ここ、魔界で過ごすようになって、数日。
正直に言って、少しずつ慣れてきている自分がいる。
最初はどうなることかと思ったけど、リュカは優しくて、この世界のことをいろいろと教えてくれた。
それに、リュカと居るのも楽しいと思うようになってきた。
もっと、リュカとお話がしてみたい。
こんな見知らぬ世界で、こんな呑気なことを考えられるようになったのは、やっぱりリュカのおかげだと思う。
だって、リュカがあんな調子だもんね。
でも、リュカには問題がある。それは・・・、リュカ曰く『夜になると、女の子が大好きになっちゃう』らしい。
本当にその通りで、夜のリュカは危険だ。本当、危なかった・・・。
って、思い出すのも恥ずかしい・・・。
だけど、昼にしても、リュカは私のことをペットとして接してくるから、すごく複雑・・・。
楽しくリュカと話したいのに、昼はペット扱い、夜は・・・話すどころじゃない。
もっと、ちゃんと喋りたいのになぁ〜。
「朝ご飯〜・・・一緒に〜・・・作る〜・・・♪楽しく〜・・・一緒に〜・・・作る〜・・・♪」
そんなことを考えていると、隣でリュカがいつものように鼻歌を口ずさんでいた。
でも、こうしてご飯も一緒に作ったり、一緒に食べたりするようになったんだし、少しずつペット扱いから離れてる気がするのよね。
ってことは、問題は夜のリュカか・・・。
まず、私の格好にも問題があるのよね・・・。
あれじゃあ、襲ってください、と捉えられても、仕方がない。・・・仕方がなくなんてないけど!!
と、とにかく。制服のまま寝ることはできないし、ずっと制服のまま過ごすのも窮屈だし・・・。
「リュカ。」
「ん〜・・・?なに〜・・・?」
「今日も買い物行く?」
「ん〜・・・?もしかして・・・・・・何か欲しいもの・・・ある〜・・・?」
「部屋も貸してもらって、これ以上贅沢を言うのも何だけど・・・。」
「大丈夫〜・・・。可愛がって〜・・・育てないと〜・・・ダメ〜・・・♪」
やっぱり、まだペット扱いか・・・。
でも、とりあえず、私の話は聞いてくれるみたいだ。
「この服、実は大切な物なの。だから、着替えるために何着か服を買ってもいいかな?寝る時用の服も欲しいし。」
「いいよ〜・・・。」
「本当?!」
「うん・・・いいよ〜・・・。」
「ありがとう!リュカ、大好き!!」
あっさり認めてもらえて、よかった!
リュカも、私に喜んでもらえて嬉しかったのか、パァ・・・と顔を輝かせて笑ってくれた。
「僕も〜・・・大好き〜・・・。」
「それって、ペットとして・・・?」
って、私は何を聞いてるんだろう・・・。
「ううん〜・・・。だから〜・・・大好き〜・・・。」
でも、昼のリュカは女の子好きじゃないからこそ、この言葉は素直に嬉しかった。
「じゃあ〜・・・ご飯食べたあと・・・行く〜・・・?」
「そうだね!」
魔界で可愛い服を見つけられるかはわからないけれど。だからこそ、服選びには多少時間がかかると思うし、早めに行っておこう。
「今日は〜・・・買い物〜・・・♪と〜・・・買い物〜・・・♪」
リュカが口ずさんでいるのを聞きながら、特に話すこともなく、買い物へ出かけた。
そうなのよね・・・。昼のリュカは、この調子だから、あまり話ができないんだよね。
だから、夜のリュカの方が喋るけど・・・私に喋らすつもりはないもんね・・・。
そんなの会話じゃない!
だからって、鍵を閉めたドアを挟んで喋るのも、奇妙だし・・・。
今日はパジャマ用の服も買って、勇気を出して部屋で喋ってみよう!!
・・・それと、護身用に何か武器になるような物も買ってもらおうっと。
まず、リュカには店の外で待ってもらって、私の着替えを買った。
昼のリュカは、私にそういう興味が無いから・・・ね。
・・・それはそれで、ちょっと傷つくんだけど。
その後、一緒に市場で、ご飯の材料を買ったり、護身用のための棒も買ったりした。
リュカは不思議そうにしていたけれど、「ちょっと、気になったから」と言っただけで、買ってくれた。
ごめんね、リュカ。これは、リュカから身を護るための物なんだ・・・とは、もちろん言えず。
そして、買い物をし終わって、家へと戻ると、早速お昼ご飯の準備をして、2人で食べた。
あ!そういえば、まだお風呂に入ってなかった・・・!!
夜に入ることはできないから、最近は朝に入ってたのに・・・。
・・・今から、お風呂の準備をして・・・・・・。うん、間に合う!
夕方にはお風呂に入れると思う。
夜になるまでに、お風呂から出ればいいんだ。
「リュカ!私、お風呂の準備してくる!!」
「うん〜・・・わかった〜・・・。大丈夫〜・・・?」
「うん、大丈夫!その代わり、夕飯の準備、任せてもいい?」
「ん〜・・・。じゃあ〜・・・逆にしよう〜・・・?」
「リュカがお風呂の準備をしてくれるってこと?」
「うん〜・・・。その方が・・・早い〜・・・。」
そうか。それも、そうだ。
お風呂の準備は居住者のリュカの方が慣れているし。
それに、リュカのご飯はいつも同じメニューになっちゃうもんね。
「わかった。私が作っておくね!」
「美味しい〜・・・の〜・・・ご飯〜・・・♪」
リュカは、私の作ったご飯を気に入ってくれていて、すごく上機嫌でお風呂場に向かった。
そう言われると、こっちも作り甲斐があるよね!
私は、さっきの市場で仕入れた物を早速使って、料理を仕上げた。
・・・でも。ご飯よりも先に、お風呂に入った方がいい?
だけど、折角作った料理を置いて、お風呂に入るのも・・・。
「出来た〜・・・?」
「うん、出来たよ。」
「じゃあ〜・・・食べる〜・・・?」
「ん〜・・・。どうしよう。」
「ん〜・・・?」
昼のリュカには、わからないかもしれない。
でも、夜にお風呂に入るのは危険だ。
だって、夜のリュカだから。
とは言え、夜のリュカとご飯を食べるのも危険。
どちらにしろ、危ないなら、どちらも夕方に終わらせるべきね!
「じゃあ、ご飯食べようか!」
私は、身の危険を感じながらも、やっぱりご飯を美味しく食べる方を選んでしまった。
・・・大丈夫。どちらも、間に合わせればいいんだから。
いつもより、少し急ぎ気味にご飯を食べ、少し急ぎ気味にお風呂に入り、今日買ってもらったパジャマ用の服を着る。
ふぅ・・・。間に合った・・・。
「そろそろ、私、部屋に行くね。おやすみ、リュカ。」
「おやすみ〜・・・。」
昼のリュカは、優しく微笑んで、手を振ってくれた。
私は借りている部屋に入り、今日は鍵を閉めずに、ドアを閉めた。
・・・さて、これから、どうしよう。もうすぐ、夜になる。
少し寝た方がいいのか、それとも、起きて待っておいた方がいいのか。
今日はいろいろ買い物もしたし、少し疲れていると言えば疲れている。
でも、寝てしまったら、それこそ危険だと思う。・・・経験上。
じゃあ、明日にすればいいとも思ったけど、早く喋ってみたいと楽しみにしてしまっている自分もいる。
ってことは、起きて待っておいた方がいいんだよね?
でも、本当に来るのかな?
今までは、私が寝てる間に入ってきてたから、どのくらい待てばいいのか、わからない。
それに、最近はずっと鍵を閉めてたんだ。もしかしたら、リュカは諦めてしまって、今日は来ないかもしれない。
“カチャ・・・”
うん、その心配は無かったみたいね・・・。
「なんだ・・・。その服、僕に脱がせてほしくて買ったんだ?」
そう言いながら、リュカは堂々と部屋に入って来た。
“カチャ・・・・・・・・・・・・ガチャリ”
ん??最初の音はドアを閉める音。その次は・・・?
「違う!・・・って言うか、今、鍵閉めなかった・・・?」
「・・・これで、簡単には逃げられない、だろ?」
やっぱり!!!本当、抜かりが無い・・・!!
でも、今日の私は、今までの私とは違うのよ。
そう自分を奮い立たせて、今日もう1つ買った、棒を取り出し、リュカに向かって構えた。
「なるほど・・・。それは、武器ってことなんだ。昼には思いつきもしなかったけど。」
「そうよ。だから、リュカ。今日は、簡単に襲われないわ。」
「それは残念・・・と言いたいところだけど、そんな物、悪魔の僕に通用すると思う?」
「・・・・・・思い切り力を入れれば、少しくらい。」
だって、現に今までリュカに襲われなかったのは、ペーパーウェイトでリュカを殴って止めてきたからだ。
「まぁ、いいよ。そこまでして、僕に会いたかったってことだしね・・・?」
そう言って、リュカは大人しくなった。
意外だった・・・。正直、本当は襲われるだろうと思っていた。でも、それを止めればいいと思っていた。
「とりあえず、そこの椅子に座ってくれる?」
「わかったよ。」
こんなにも、ちゃんと会話ができるなんて・・・!!
これだけで私は、かなり嬉しくて感動しそうだった。
ううん。でも、まだ喋り始めてばかり。もっと、お話したい。
「・・・少し遠くない?」
「まだ警戒心を完全に解いたわけじゃないんだから。」
「本当、素直じゃないなぁ・・・。」
「本心からの言葉よ。」
「でも、今日はあんな時間にお風呂に入って・・・。本当は、僕に入って来てほしかったんでしょ?」
「今日は忙しかったら!それに、急いで出てきたじゃない。」
やっぱり、夜に入ってれば、リュカは入って来るつもりだったのね・・・。
本当、間に合って良かった・・・。
「照れなくてもいいのに・・・。今朝、愛を囁き合った仲だろ?」
愛を囁き合う?一体、何の話??
「も嬉しそうに、僕のこと大好きだって言ってたじゃないか。」
あぁ・・・。あのことか。あれは、頼みを聞いてもらえた喜びから出た言葉であって、愛の言葉ではない。
「僕も大好きだって答えたら、は『それはペットとして?』なんて聞いてくるし・・・。」
そ、それは・・・。私も思わず聞いてしまってから、恥ずかしくなったけど。そういうつもりで言ったんじゃないもん。ペット扱いが嫌だから、そう聞いただけ。
「それで、僕はちゃんとだから大好きなんだ、って答えて、愛を確かめただろ?だから・・・。」
そう言いながら、リュカは椅子から立ち上がり、私が座っているベッドの方へ近寄ろうとした。
・・・ほら!やっぱり、危ない!!
私は慌てて、護身用の武器を掴んだ。・・・たとえ、ただの棒だとしても、私にとっては最大の武器なんだから。
「来ないで・・・!!」
「わかったよ。だから、それ下ろして・・・。」
「リュカが先に座ってから!」
「仕方がないね・・・。」
渋々といった様子で、リュカは椅子に腰掛けた。
・・・やっぱり、この武器は頼りになる!
「本当・・・ちゃんと愛し合ってるんだから、少しぐらいヤらせてくれてもいいのに。」
「少しじゃないくせに・・・。」
「じゃあ、本当に少しだけだったらいいの?」
「そういう意味じゃない!!」
それに、絶対少しで止めるわけないじゃない。だって、リュカだもん。
「それにしても。愛し合ってることは、認めてくれたんだ。」
・・・・・・あ、そっか。そっちの否定を忘れてた。
「ようやく素直に言ってくれたね?」
「・・・・・・愛してるかは別として、好きなのは好きだよ。リュカには本当、感謝してるし。」
私がそんなこと言うとは思っていなかったのか、リュカは少し驚いていた。
「・・・でも、を助けてるのは、昼に会っている僕、だろ?」
私としては、こんなことを言うリュカの方が意外だった。
「リュカはリュカ。どっちも、リュカなんでしょ?」
「それはそうだけど・・・。」
「だから、ちゃんと両方のリュカとお話したくて、今日は夜を待ってたの。」
「・・・・・・ありがとう。」
なんだ・・・。夜のリュカだって、こんな素直になれるんだ・・・!やっぱり、リュカはリュカなんだよね。本当、今日は思い切って、夜のリュカと話してみてよかった。
「こっちこそ。いつも助けてくれて、ありがとう。」
そう言って私が微笑むと、リュカも少し笑ってくれた。そして、リュカは椅子から立ち上がり、窓の方へ歩いて行った。
「・・・・・・夜も悪くないね。」
リュカは、窓の外を見て呟いたから、どんな表情をしているかはわからなかった。それでも、リュカはリュカなりに、夜の自分を気にしていたみたいだということはわかった。
・・・本当は反省してくれてたのかな。そうだとしたら、今までの私は、リュカに冷たいことを言い過ぎたかもしれない。
でも、きっと今からでも、今までの分は取り返せるよね。そう思いながら、私はリュカに声をかけた。
「リュカ。こっちに来て、お喋り続けよう?」
窓の外の月を見ていたリュカは、私の声を聞いて、ゆっくりとこちらを振り返った。そして、嬉しそうに微笑んだ後、こくんと頷いてこちらに戻ってきた。その様子は、やっぱり昼のリュカと変わりないように思えた。
・・・でも、その油断に気付いたとき、私の体勢は、既に変わってしまっていた。
「があまりに可愛いことを言ってくれるから・・・。やっぱり、我慢できなくなったよ。」
そう言ったリュカの顔は、私の目の前にあった。さらに、リュカの後ろには天井が見えた。
つまり・・・、押し倒されてる?!!
「いいよね、・・・?」
状況を理解した私は、慌てて護身用の棒を掴み、それをリュカ目掛けて振り下ろした。リュカは、いつものように気絶をし、そのまま寝てしまった。
・・・・・・・・・・・・。結局、夜のリュカは夜のリュカだった。
それでも、前より進歩はあったと思う。今日、夜に話せたことは決して無駄じゃなかった。
だから、リュカ。これからは昼も夜も、もっと話そうね。・・・特に、夜は“話だけ”をしようね!
このゲームは、体験版から結構ハードです(詳しく書けません・・・/涙)。ここまで、ハードとは思っていませんでした・・・orz
と言いつつ、全キャラのルートは試してみたんですが(笑)。とにかく、ほとんどがハードでした・・・。異世界だからこその苦労と・・・危ない意味での・・・(苦笑)。
そんな中、甘さも味わいつつ、危険度も低・・・くはなかったですが(笑)。とりあえず、癒しだったのはリュカでした!
リュカには、本当癒されました・・・。「人間」のことも多少知ってくれている(?)様子だったので、異世界だからこその苦労が少なかった気がします。そんなわけで、リュカ夢を書いてみました!
でも、私は本編未プレイですので、いろいろと間違っていることもあると思います。その辺りはご勘弁いただき、この話は完全な私のオリジナルストーリーとして読んでいただければ、と思っております。
('08/09/09)